泣いて駆けてゆけばそこに
きらめく海原
けれど受け入れはしなかった
私の弱さを

沖を滑ってゆく船と
足元で遊ぶ犬と
風を切る鳥たちだけ
自由だった

夢中になれる何かが
明日へいざない
いつしか遠く旅したと
あなたに告げる
いつも悩みをたずさえて
潮騒を聴いたけれど
答えは得られぬまま
朝焼けは終わる

銀の雲間から差し込む光
幾筋も見とれ
冬の日の冷たさを忘れていた
消えてゆかない悔しさが
私を導き
気がつけばここに来ていたと
笑って言える
言葉にない愛の透き通る手紙を
海は寄せてくれる
波に乗せて

ああ
失うものはもう何も無くて
心静かな私が初めて見える
夢中になれる何かが
どこまでも導き

いつしか遠く旅したと
この海に立ち
告げよう

松任谷由実
『さまよいの果て波は寄せる』