飛紅真の手紙

フェミニスト&ワーママブロガー、自然、アート、社会問題を綴る。

医療・介護の人手不足と採用難時代に突入、いい加減もう病院を減らすしかない

2025年には3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となる超高齢化社会を迎え、医療・介護の人手不足が深刻化する2025年問題を現場で実感しています。

看護部長と2日に1回はこの話になります。私の働く法人ではグループ病院全体で人手不足と採用難問題がコロナ以降深刻化しており、他地域のどこの病院でも同じような状況。

 

1.病院でいま起こっている問題

介護施設が増えているのを肌で感じます。看護師が辞める理由に、「新たに開設される介護施設に行くから」が本当に多い。病院は人手不足なので有給は年5日間を消化するのが限界で、一人当たりの夜勤回数が多くなる過酷な労働環境で、若年層を中心にどんどん根を上げていくのです。もはや病院は転職候補になく、夜勤なしのオンコール体制(呼び出しがあれば夜間出勤する)の介護施設で働くことを考えるのです。

どこの病院も看護師不足なので、いつでもどこでも転職自由な引く手あまたの売り手市場。「辞めたい」と考える看護師はいかに楽でいい条件の病院がないか、転職サイトに登録してマッチングを繰り返しています。病院見学に行った当日に採用面接を済ませ、取り逃がさないよう即日内定を出す病院もあるくらい。転職業者を通して採用すると一人当たり100万以上の斡旋料を払わなければならないので病院側には痛手ですが、背に腹は代えられません。

看護師不足が原因で病床数を削減したり、病棟閉鎖をせざるを得ない病院も増えています。そうでもしないと、看護職員がどんどん離職して劣悪な労働環境、医療の質低下に直結し、それが病院の評判を低げ、ますます採用難の悪循環に陥るからです。

当院の薬剤師もボヤいていますが、ドラックストアが増加しているせいで希少な薬剤師がそちらに流れるため、深刻な病院薬剤師不足が続いているといいます。

 

2.介護施設で起こっている問題

介護施設が増えているので、入居待ちは減っているどころか、むしろ空室が目立ち赤字経営。介護施設の増加に介護職員の供給が追い付かず、閉院に追い込まれる介護施設もあるくらい。人手不足により過酷な労働環境なので、「聞いていた話とあまりにも待遇が違う」と、舞い戻ってくる看護師もいます。

私が精神科訪問看護に行っている軽症の統合失調症の患者さんが、このたび介護施設の介護職員(無資格でも採用される現状)として障がい者雇用されたのですが、賞与が出ると聞いて就職したものの、数万円の処遇改善手当てを反映しただけの賞与で、「聞いてたんと違う!」と怒っていました。

さらに、どこの介護施設も2~3人の外国人技能実習生を常勤で雇用しなければ閉院の危機と隣り合わせなので、日本人だけでいまの医療・介護体制を維持するのは無理ゲー。

 

3.病院・クリニック多すぎ問題

全国的に、病院の数は微増、クリニック(無床診療所)の数はむしろ増加の一途、労働人口減少と明らかに反比例しているのです。狭い地域に同じような規模・機能の病院・クリニックが無秩序に乱立しているため、患者も看護師も取り合っています。蓋を開けば病床稼働率(どれだけベッドが埋まっているか)60%とか、もはや開店休業状態。

もっとひどいのは、精神科病院。赤字を出さないために、患者が帰る場所がない&地域の受け皿がないのをいいことに患者を退院させず病床稼働率90%をキープし続けてきました。精神病床が世界一多い、人権意識の低~い悪名高き日本

人口増加していた昭和に作られた病院が全く減っておらず、国は医療の質を上げようと「7対1看護(7人の患者に対し1人の看護師配置)」など人員配置基準を厳しくしてきたのだから、7対1を取っている大規模病院に看護師が偏在するのはわかりきったこと。年間約4億円の入院基本料が病院に入ると聞いたことがあります。ちなみに精神科病院なんて15対1、20対1の世界。マトモに看護なんてできません。

誰かが病欠や産休に入ると、緊急性の高いケアを優先し入浴や排泄などの清潔ケアに手が回らず患者のQOLが維持できなくなり、医療事故も増えます。災害やコロナパンデミックが起きた時に、いとも簡単に医療崩壊します。結果、自分のやりたかった看護ができず残業続きで有給も取れない看護師が疲弊しメンタル不調を抱えてどんどん離職していくのです。

結婚や出産を機に家庭に入ったままの潜在看護師を現場に戻す取り組みも看護協会を中心に粘り強く続けていますが、潜在看護師が希望するのは「常勤で日勤のみ」で、当然といえば当然。夜勤人員が必要な病院にそういった募集はほぼないので、必然的にクリニックか訪問看護くらいしかありません。

病院看護師は減少の一途をたどり、人材は確実にクリニックや訪問看護といった在宅医療に傾いています。本来目指すべき方向に。過酷と分かっている病院勤務で、就職後1年以内に新人看護師がポキッと折れてしまい、看護師という職業自体を辞めていくケースも少なくありません。

地域医療構想で公立病院を削減する案が出ましたが、コロナで病院の需要が一時的に高まったせいで公立病院は全く減っていません。

ダウンサイジング(病床削減)じゃもう間に合わない!!

いい加減に病院の数を減らすべき!!

 

4.医療DX導入に立ちはだかる大きな壁

マンパワー不足をDX導入で補えばいいじゃないか、という意見がありますが、数億円かかるシステム導入ができるのは一部の大規模病院くらいで、人手不足でDXが本当に必要な中小規模の病院にそんな財源があるはずありません。国が莫大なDX導入補助金でも出さない限り無理ですね。

また、中小規模病院にはアナログに慣れてきたシニア世代が多く勤務しており、事務部長や看護部長といったトップもまたシニア層。残念ながらDX化に舵を切ろうというインセンティブが働かない、といったソフト面も大きな壁となっているのです。

 

いや~~~どうなっていくんだろ、日本の医療・介護。

国が計画的に病院を減らすより早く、過疎地域の病院からどんどん潰れていくことで自然淘汰していくしかないのでしょうか?