飛紅真の手紙

フェミニスト&ワーママブロガー、自然、アート、社会問題を綴る。

大自然の摂理とは真逆な『ライオン・キング』を観ていつも疑問に思うこと。

ディズニー長編アニメ『ライオン・キング』30周年記念リバイバル上映を子どもと観てきたんですが、いや~30年前のアニメ映画とは思えない映像美と迫力に正直驚きましたよ。文句のつけようのない歴史に残る作品。

実写映画PR用であろうクリアファイルをもらいました

ただし!!!

演出や音楽、メッセージに素直に感動して涙する自分と、「あれ?待てよ?なんか変」と冷静な頭で考え始めてしまう自分がいるのも、この「大自然系映画」の難しさだと思います。20代の頃に劇団四季の『ライオン・キング』も観たことありますけど、前評判がよすぎて感動ポイントが分からなかった記憶があります。

以下に、私の違和感とボヤキを書き留めておきます。

 

1.大自然の摂理からかけ離れすぎなストーリー

子ども向けアニメ映画なので、ディズニーの魔法“ディズ二フィケーション”(実世界や原作の残酷さや毒気を消毒して表現するディズニー特有の世界観)の成せる技により、勧善懲悪でハッピーエンドな物語に仕上がるのは百も承知です。けれど、大自然がテーマだけに、あまりにもマイルドすぎるというか。

ディズ二フィケーションについてはコチラも参照 ↓ ↓ ↓

本作が提示するテーマ「繰り返す生命の環 サークル・オブ・ライフ」つまり、弱肉強食、食物連鎖についての映画なはずですが、「百獣の王」=「プライド・ランド(動物たちの王国)の王」という、やや強引なコンセプトにいつも引っかかってしまいます。

「百獣の王」=「食物連鎖の支配者」というのが本当の姿。プライド・ランドの王であるムファサや息子シンバを、食物連鎖の下位にある他の動物が崇拝するかな~。むしろ必死に逃げるでしょ。まるで「生物多様性」「ソーシャルインクルージョン(弱者を包摂する社会)」のようで、人間社会に寄せ過ぎな感があります。

大自然はそれとは真逆で、利己的ですからね。生命維持や子孫繁栄のために他の動植物を利用することはあっても、生物多様性のために守ったり闘ったりしません。けれど本作では、動物みんなを守る王・・・と思いきや、守るはずの仲間を狩って食べる!!!ガオ~!!!ってなシーンも出てくるから、子どもでもモヤモヤするんじゃないだろうか。

 

2.もっと大自然に振り切ってほしかった

ディズニー映画の中でも近年まれにみる男性性を描いた勇気ある作品、というような評価もされているらしいのですが。せっかくなら、もう少し大自然や野生に振り切って描いてもよかったのではないか、と思うのです。

大自然の摂理にあまりにも反した「サバンナの動物みんな仲良しこよし」の世界観ではなく、実際のライオンのプライド(群れ)にもう少し忠実に、ライオンの中の王、くらいに設定しといたほうがすんなり理解できてよかったんじゃないでしょうか。それだとスケールが狭くなってしまうから設定上仕方がなかったのでしょう。

ハイエナはサバンナすべての動物から忌み嫌われている、という設定も極端(笑)ですし、ハイエナがそこまで悪者か!?(悪者はむしろ人間の方でしょ)とも思うので、ライオンVSハイエナ、その縄張り争いを静観する他の動物たち、くらいの設定なら理解できるのですけれど。

おそらく、私は「自然農」という農法をお勉強中だからか、「いや~~~自然は食うか食われるか、よ」「動物や虫、容赦ないからね~」と、そこの感度が人より少しばかり敏感なだけなのかもしれないんですが。

素晴らしい作品であることに変わりはありませんので、別の角度から見てみてもまた別の面白さが味わえるのではないかと思います。