飛紅真の手紙

フェミニストで精神看護専門看護師ブロガー、自然、アート、社会問題を綴る。

日本版性暴力対応看護師(SANE-J)認定試験に合格。私がこの資格を取った理由。

7月8日に日本フォレンジック看護学会が認定する「日本版性暴力対応看護師(SANE-J)」の認定試験を受験しました。7月25日にホームページ上で合格発表があり、無事合格できました。合格率は85%くらい?と見ています。

 

日本版性暴力対応看護師 (Sexual Assault Nurse Examiner-Japan:SANE-J)とは、日本フォレンジック看護学会が2019年度より日本独自に認定する資格であり、講義・演習時間は 64 時間のSANE教育プログラムが必要である。
看護ケアに必要な性暴力に関連する心理・身体・社会および法医学的な知識・技術・態度をもち、日本の法律に基づいて、被害者に二次被害を与えず専門的知識を持ちケアを行うとともに、支援に関わる多職種との協働や、地域社会への啓発・教育活動等が主な役割。

 

なぜ私は日本版性暴力対応看護師(SANE-J)資格を取ったのか、ふり返ってみたいと思います。

私は、看護師と保健師の他に、学会認定資格を2つ持っています。

専門看護師(日本看護協会の認定資格)

日本版性暴力対応看護師(日本フォレンジック看護学会の認定資格)

看護師と保健師は国家資格ですが、更新制ではなく「どこでも働けるジェネラリスト」としての資格です。

一方で、学会認定資格は5年更新制。つまり、現場での実践や貢献、知識・技術をアップデートし、「質を保つこと・高め続けること」「どんな成果を出しているか」が問われます。

「ナースの中のナース」「ナースよりも格が上」「知識・技術が最も高いナース」ということでは決してありません。そんなもの誰にも測れないと思います。

そうではなくて、「学会認定資格を持っているからこそできること」の引き出しが広がるから、という理由が大きいのです。

「私はこの仕事がしたい」と自分が得意な仕事を堂々と選べて、組織に納得してもらえる説得材料になるからです。特に、対専門職に「こんなことができますよ~」と、自分の得意分野を売り込むことができ、「これをお願いしたい」とニーズを集めることができるものだと思っています。

私が日本版性暴力対応看護師の認定資格を取った理由は、「性暴力被害者の支援がしたい」「加害者も被害者も生まないために予防啓発がしたい」からに尽きます。私はこの分野に興味関心が強く、この分野の仕事がしたい!という意思表示でもあります。

一般社会の人にとっては看護師と専門看護師の違いをいくら説明してもなかなか分かってもらえませんし、そもそも日本に150万人いる看護師・准看護師のうち専門看護師は3155人(0.2%)で、認知度は決して高くありません。。。

日本版性暴力対応看護師(SANE-J)なんて、日本に120人弱(0.008%)しかいません。。。

そんな状況の中、「どんな資格なのかちゃんと理解してもらおう」と努力するよりも、「どんな資格か知らないけど、信頼して任せられそう」と思ってもらえて、活用してもらえることこそ重要と思っています。

 

性暴力被害者支援は、特に性暴力についての理解やポリシー、被害者へのリスペクトがないと、高い確率で二次被害(セカンドレイプ)を生みます。看護職であっても、です。「理解者がここにもいる」ということを被害者には知ってもらいたいです。だからこそ、この資格を名乗るからには、知識・技術をアップグレードし続けなければなりませんし、性暴力という問題を考え続けることを自分に課すことが必要と思っています。

正直、私はこの資格を取ろうと考え始めた時から、この仕事をするには相当の覚悟がいるだろう、と考えしばらく心の準備が必要でした。

性暴力の問題は、「社会の闇」の部分に関わることであり、「人間の闇」の部分に関わることでもあり、支援者として中途半端な気持ちで関わってはいけないと思っています。

これまで精神科で働いてきて、この問題は現場のさまざまなケースで見られました。そして、私たちの生活のあちこちにこの問題が潜在・顕在しているので、何度も自問自答した結果、「私はやっぱりこの問題から目をそらしたくないし、考え続けたい」という自分の心の声を大切にしました。

「私だからできることは何か?」と考えたとき、「この問題を考え続けてきた者として、やるべきじゃないか」と覚悟を決めました。

「なぜ社会から性暴力がなくならないか」なんて問い続けても答えは出ないし、掲げる理想に刑法や社会の認識は追いつかない。支援者である前に人間として「共感すること」=「傷み」になるので、支援者として苦しみは続きます。しかし、苦しみながらも「やりたい」と思える仕事に出会えたし、なかなか医療や社会が手付かずなところを少しでも変えていけるような可能性を感じています。

いまのところ、専門看護師&管理職として働いているので、日本版性暴力対応看護師(SANE-J)としての業務や報酬があるわけではありませんが、ゼロベースから少しずつ関わりを増やし、拡げていこうと考えています。