飛紅真の手紙

フェミニストで精神看護専門看護師ブロガー、自然、アート、社会問題を綴る。

社会問題

性暴力とトラウマインフォームドケア

ジャニー喜多川氏による性虐待や、家庭内での性虐待など、勇気ある告発をされた当事者たちは一様に何らかのトラウマ症状に苦しみ、いまでも治療を続けている方がほとんど。 彼らの苦しみを目の当たりにして、性暴力のトラウマ、特に小児期にトラウマを負うこ…

解離性同一性障害(DID)を描く映画『スプリット』と『フランキー&アリス』との決定的な違い

解離性同一性障害(DID)は、かつて「多重人格障害」として知られ、誤解や偏見を受けることが多く、日本では滅多に診断されることのない精神障害です。DIDを描いた二つの映画を比較して「描かれ方でこうも違うものか!」と驚嘆しました。 1.誤解と偏見を受…

芸能界の性暴力報道をめぐる「セカンドレイプ」が社会全体に与える深刻な影響

ダウンタウン松本人志氏による性暴力報道をめぐって、「ちょっと看過できないな」と思う私の考えを書き連ねておこうと思います。 1.セカンドレイプの背後にあるレイプ神話 こうした、女性に対する性暴力の報道をめぐって必ず出てくる意見が、 「リスクがあ…

「ワーキングマザー」「キャリア女性」という言葉に含まれるアンコンシャスバイアス

「働く女性」「ワーキングマザー」はもはやマジョリティになった(2022年の女性の就業率は74.2%)にもかかわらず、悲しいことにまだまだこの言葉が通用する社会だ、と過去記事に書きました。↓ ↓ ↓ 女性が働くことにまつわる表現にはおかしなものが多く、そこ…

『あのこは貴族』から「都会と地方」という偏見について考える。

私は「田舎」という言葉が大嫌い。経済格差や教育格差があるのはわかりきったことなのに、それでもまだ「都会」「田舎」と出身地で優劣をつけたがる偏見が透けて見えるから。地方生まれ地方育ちの私が指摘したところで「結局は田舎者の負け惜しみ」とさらに…

『82年生まれ、キム・ジヨン』から女性のキャリア断絶と産後うつについて思うこと

「ワーキングマザー(ワ―ママ)」「ワンオペ育児」といった言葉が早く死語になればいいと思う。早くそんな言葉が要らない社会になればと思いつつ、悲しいことにまだまだ通用するからこそ、嫌悪感をバネにあえて使っています。 ずっと観たかったフェミニズム…

お金持ちほどゴミの量が少ない。

お金持ちのゴミは量も質も違うということを知って目から鱗が何枚も剥がれました。ゴミ清掃員芸人のマシンガンズ滝沢秀一さんの本を読んで、ゴミには捨てる人の生活が映し出されるだけでなく、ゴミにも人格が表れ、生き様を物語るなと感じました。 1.お金持…

なぜ性暴力はもっともトラウマになりやすいのか

性暴力について学び始めた頃、居ても立っても居られない気持ちになったのが、「性暴力はもっともトラウマになりやすい」「何度も再被害に遭う」ということ。なぜ性暴力被害の当事者がそこまで苦しみ続けねばならないのか? 性暴力は「魂の殺人」と言われて久…

ディズニープリンセスはジェンダー問題と女性の自立を考える最高の教科書

ディズニー映画をまともに観たことがなかった私が、ディズニープリンセス好き5歳長女と一緒にディズニープリンセス映画13作品を観たところ、「一人ひとりの生き方がめちゃくちゃ示唆深い!」とがぜん興味がわき、ディズニープリンセスと女性の自立について、…

朝型か夜型か調べてみたら衝撃的すぎた。自分のクロノタイプを知らないと超危険。

「私ってショートスリーパー?」と勘違いするくらい「長く眠れず早起き」体質な私。大好きな睡眠博士の柳沢正史先生が出演するYouTubeを見ていたら、「朝型か夜型かは生まれつき決まっている」「ショートスリーパーなどほぼいない」ということに驚きました。…

Dヲタがつくり上げたディズニーランドの消費文化~社会学から見たディズニーランド~

20年ぶりにディズニーランドに行ったことで、リピーター率90%越えのディズニーランドの魅力とは何なのか、ディズニープリンセスの何が5歳長女を惹きつけるのか深堀りしてみたくなり、ディズニーランドに行った後も徹底研究を続けることにしました。 ディズ…

日本版性暴力対応看護師とジャニーズ事務所性虐待問題

ジャニーズ事務所性虐待問題は、日本版性暴力対応看護師(SANE-J)の資格を取得し、これから活動していこうとする者としては黙っていられず、ブログで意見を述べてきました。 1.「性加害」という不透明な言葉 私は今回の問題について意見を述べるとき、必…

ジャニーズ性虐待問題から露呈した低すぎる日本の人権意識

ジャニーズ事務所の2回目の会見から、性暴力に対する甘さ、低すぎる人権意識が露呈し、改めて失望しました。 それは以下の理由からです。 1.事務所・メディア・スポンサー企業には全容解明する意思が見えない 「全容解明しないのか」という記者の質問に、…

精神科医療をぶっ壊すには臨床か教育か

私がなぜ民間の精神科病院で働き続けるのか。それは、「負の遺産」である精神科病院に依存した精神科医療をぶっ壊したいからです。 1.民間精神科病院で成り立っている日本の精神科医療 日本は、精神病床数(精神科のベッド数)は世界一多く、長期入院も世…

トランスジェンダー映画『ミッドナイトスワン』から考える、社会的弱者の立場を「わかる」とは自分の中の当事者性に気づくこと。

「私って気持ち悪い?」「何で私が!」「何で私ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないの・・・」 これは、トランスジェンダー女性(MtF(male to female=男性性から女性性へ)を描く映画『ミッドナイトスワン』でホルモン治療に苦しみながら、むせび泣く主…

LGBTQ当事者の苦悩。ケンカ別れしたゲイの男友達のことを想う。

私には大学時代からのゲイの男友達がいます。「いる」と言っていいのか自信はないけれど。 というのも、お互い精神科看護師として働き、大学院に社会人入学していた頃に、ちょっとしたすれ違いからケンカ別れしたまま、私は結婚し出産してあっという間に10年…

「沈黙」ではなく「隠ぺい」。35年前の北公次氏の性虐待告発を隠ぺいし続けたジャニーズ事務所とメディア

元フォーリーブス北公次氏による34年前の告発ビデオ映像を観て、現在当事者たちが告発しているジャニー喜多川氏による性虐待問題は、北公次氏の告発内容と全く変らないことに真底驚きました。 北公次氏は16歳から4年半、ジャニー北川氏から毎日性虐待を受け…

「生まれてくれてありがとう」と言いたくなる映画『ベイビー・ブローカー』

私は「赤ちゃんポスト」肯定派です。なぜなら、産んでもどうしても育てられない事情は必ずあり、生後0日死亡(新生児殺)を防げるから。 つまり、母親側も子ども側をも守ることになる最後の方法と考えるからです。 1.映画『ベイビー・ブローカー』 2022年6…

守られるべきは当事者で、性虐待を起こしたジャニーズ事務所ではない。

今日はずっとアドレナリンが出続けています。 ジャニーズ事務所が記者会見をすると何日も前に知ってから、頭の片隅にずっとありました。 ノーカット記者会見YouTube動画もまだ見終わっていないけれど、一市民として、日本版性暴力対応看護師(SANE-J)として…

働く親には試練の夏。コロナ5類移行の影響で感染症のデパート化した幼稚園でインフルエンザ罹患と予防投与。

昨日、幼稚園に通う5歳の長女がインフルエンザA型と診断されました。熱を出して休むのはこの夏これで3回目。如何せん多いです。 インフルエンザの威力はやっぱりすごい。 朝、37.3℃の微熱(その他は喉の違和感と軽い咳)からその夜には40℃まで上昇する激烈さ…

歴史が動いた瞬間。ジャニーズ事務所の性虐待事実認定の重さ。

ジャニー喜多川氏による性虐待関連のすべての記者会見は、ノーカットでYouTubeで見るようにしています。 ニュースで一部だけを切り取られて取り上げられたものを観たくはないし、話し手の言葉を自分の耳ですべて聞いて考えたいからです。 8月29日の外部専門…

性的人身取引された「現代奴隷」は私たちの身近にいる。

「女性が買われる」「女性が消費の対象になる」ということが、子どもの頃からずっと心に引っかかってきました。 「なんでだろう?」と、自分が納得できる理由を探すように、売春や性風俗産業についての書籍やニュース記事、マンガや映画を観たり読んだりして…

「人類史上最悪の性虐待事件」を生んだ国でどう生きるか。

ジャニー喜多川氏の性虐待問題を国連人権理事会が訪日調査し、8月4日に会見を開きました。事務所、政府、メディアのあり方が批判され、「事務所タレント数百人が性虐待を受けた」ことが世界的に公になった、記念すべき日でもあります。 その直後に開かれた、…

原爆体験を子どもたちにどう伝え残すべきなのか。

広島・長崎への原爆投下から78年。 「78年も経っているのか!」と思うと本当にびっくりします。それは、原爆体験はさまざまな形で伝えられてきたことで、決して「色褪せない」と思うからです。 だからこそ、あの手この手で「色褪せない」記録をこれからも伝…

ジェンダーギャップ指数が過去最低125位の日本のヤバさ。

日本は、 「日本のジェンダーギャップ指数が146か国中125位」 という不名誉な称号を与えられましたね。 私は震えました。正直、「恥ずかしすぎる!!」「なんっって不幸!!」って思ったのです。この国に女性として生まれただけで生きづらくなるって、不幸以…

関心をもってもらえることと、誰かに伝えたいと思うこと。

初めて他のブロガーさんに私のブログの記事を紹介していただきました。 感動したのが、記事リンクを貼っての引用だけでなく、「飛紅真(私)はどんな人だろう」「ひっそり書きたいタイプなのかな」と、あれこれ思案し、配慮しながらブログ自体を紹介してくだ…

日本版性暴力対応看護師(SANE-J)認定試験に合格。私がこの資格を取った理由。

7月8日に日本フォレンジック看護学会が認定する「日本版性暴力対応看護師(SANE-J)」の認定試験を受験しました。7月25日にホームページ上で合格発表があり、無事合格できました。合格率は85%くらい?と見ています。 日本版性暴力対応看護師 (Sexual Assau…

「母親になって後悔してる」を読んで、スーパーマザーになる必要なんてないと思った。

『母親になって後悔してる』というショッキングなタイトルの本を、2022年12月放送のNHKクロ―ズアップ現代で知り、つい先日読みました。 子どもを産んで後悔しているイスラエルの女性たちをインタビューし、社会学の立場から考察した本。特に母親たちの反響が…

ジャニーズ事務所の性虐待問題「再発防止特別チーム」設置に期待する、組織に外部の目が入ることの大切さ。

ジャニーズ事務所が第三者委員会による調査をついに決断したようです。 これについては、大きく評価できると私は考えています。 また、組織が事件や事故など不祥事を起こしたときの第三者委員会による検証というのは、「反省と再発防止」という大きな社会的…

家族や社会の犠牲になった女性の生き方とは。海外に売られ売春を強要された少女たち「からゆきさん」。

からゆきさん。 「唐行きさん」=外国(唐天竺)に働きに行く意味で用いられた九州の言葉。 江戸末期から昭和にかけて、海外に性的人身取引(売春や性的搾取が目的の人身取引)されてきた多くの女性たちがいたことを、1冊の本をきっかけに知りました。 1.…