飛紅真の手紙

フェミニストの精神看護専門看護師ブロガーが、自然、アート、社会問題を綴る。

「ワーキングマザー」「キャリア女性」という言葉に含まれるアンコンシャスバイアス

「働く女性」「ワーキングマザー」はもはやマジョリティになった(2022年の女性の就業率は74.2%)にもかかわらず、悲しいことにまだまだこの言葉が通用する社会だ、と過去記事に書きました。↓ ↓ ↓

女性が働くことにまつわる表現にはおかしなものが多く、そこには深い闇が潜んでいるのでもっと深堀してみようと思います。

 

1.「働く女性」「ワーキングングマザー」という表現の背景にあるもの

なぜ「働く女性」「ワーキングマザー」とわざわざ強調しなければならないのか?そうでもしなければ「女性が働く困難さ」が伝わらないから、だと考えます。なぜ女性が働くのは困難なのか?それは、社会全体に「女性は働くべきではない」「女性の役割は家事育児」というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が根強いからだと考えます。

結局は女性を働きにくくさせている家庭や周囲や職場の空気も、男女の賃金格差が大きいのも、根底にはこのような女性を縛り付けるアンコンシャスバイアスがあるからではないか、と思うのです。

「働く男性」「ワーキングファザー」とはわざわざ言う必要がないのはなぜか?男性が外で働くことが当たり前という前提があるので、強調する必要などないからです。家父長制が根強い日本では、「家事育児」のほとんどを女性が担うことで男性が働きやすい環境、社会秩序を維持し続けてきました。

私はこう考えているので、「ワ―ママ」と自称するときは「私こんなに頑張っているのよすごいでしょ」と誇るべき言葉として使ってはいません。ワ―ママの社会的障壁はまだまだ高いんです!こんなにもね!という皮肉を精一杯込めた自虐的な気持ちで使っています。

 

2.「キャリア女性」「キャリアウーマン」という歪んだ女性像

「キャリア女性」とは言っても「キャリア男性」とは言わないなーとも思います。やはり、男性の場合はキャリアを高めていくことは自然な道のりであり、男性として頼もしい、目指すべき、くらいの固定観念がありそうですが、女性がキャリアを高めるのはまだまだ異質な一部の存在であって、「結婚や育児を犠牲にしている」「女性は家事育児をすべき」というアンコンシャスバイアスがあるように思えてなりません。まるで悪いことをしているかのような・・・。

さらに、「女性はそこそこ仕事していればよい」「男性に仕事で勝つべきではない」といったアスピレーション(達成欲求をくじく)も作用して、無理して頑張っている、強い、怖い、と、働く女性の評価を下げてしまっている気がするのです。日本社会では実はキャリア女性の社会的地位は高くないのではないかとも思います。鼻っぱしの強い女、と思わるよりも男性から求めてもらいたくて、キャリアアップを避ける女性も少なくないのではないでしょうか。

 

3.日本のワーキングマザーが過酷な理由

日本では上述のアンコンシャスバイアスの影響で「寿退社」という文化がまだあるようですし、「出産したら今の仕事は続けられない」という女性も多いです。出産前と同じように働くのは無理ですが、辞めずとも柔軟に仕事内容や勤務形態を変えるということが日本では非常にやりにくいように思います。やはりここにも、「女性は出産したら仕事を辞めるもの」というアンコンシャスバイアスが働いている気がします。

育休復帰して、復帰前とまったく同じキャリア、ポストに戻れるかといったら、戻れない職場もまだまだ多いのではないでしょうか。それは男性と同じような働き方を求められてしまうからであり、上司も男性ばかりだからロールモデルも少なく、「働く女性にはこんな苦労がある」という創造力や「こんな働き方もできる」という発想の柔軟性が乏しいからです。

「職場に迷惑をかけるから育休が(長く)取りにくい」「時短勤務や急な休みを取ると独身や子どもをもたないスタッフの不公平感が増す」という職場の雰囲気も、ワーキングマザーが働きにくい要因の一つではないかと考えています。

いま思い出しても腹が立って震えだしそうなエピソードがあります。人事制度を変えるにあたってコンサルタント(30代後半〜40代前半くらいの男性)が入っていた時期、役職者全員へのヒアリングがありました。

私が2人目出産し育休復帰後の時短取得中の役職者ということもあって、「職場の育休や時短の取りやすさ、休みやすさ」を尋ねられ、「女性が多い病院という環境もあって理解はあるのではないか」と答えたら、「それは大切ですね。しかし一方で、独身や若年者などの不公平感があることをどう考えますか?不公平感をなくすにはどうすべきでしょうね?」と意地悪な切り返しをされました。

時短取得中の当事者の私にそれ聞く?どんだけ肩身の狭い思いや気苦労を重ねて育休や時短取ってると思う?育休も時短もそんなに特別で非道なの!?病欠や介護で休むスタッフも多いのに、お互いさまじゃないの?当然の権利なのでは?と、デリカシーのなさと想像力の欠如に腹が立って腹が立って。

若いコンサルタントの言葉に私は、「育休や時短は職場に迷惑だ」という暗のメッセージを受け取りました。これがまさに、暗に人を傷つけるマイクロアグレッション(小さな攻撃)だなぁと思いました。若い世代なのにいまの時代を何もわかってな~い!!と怒りに震えていました。しかし、当時の私はショックと引け目から反撃の言葉が見つかかりませんでしたが、いまでは100倍返しでお見舞いしたいです(笑)。

これが、女性が働くことに対するアンコンシャスバイアスが根深い日本の現状。若いコンサルタント男性でこの体たらくです。ワーキングマザーの風当たりはとても強いのです。こんな風土では、女性でなくとも、病気や障害や家庭の事情などいろんな事情を抱えてもきっと働きにくいと思います。社会全体の許容量がまだまだ低すぎるのです。

 

4.育児という「選択」

結婚することも、子どもを授かって育児することも「特権」では決してありません。自由に選べる「選択」の時代であるはず。理由や事情があって「したくても選択できない」人もいると思いますが、一方で、あえてそれを「しない選択」もまた尊重されるべきです。

育児を特別視するのではなく、人生において数ある重要な「しても・しなくてもいい選択」の一つとしてとらえる社会であってほしいです。そんな選択を尊重し、「お互いさま」と思って協力し合えるD&I=ダイバーシティ(多様性)&インクルーシブ(包摂性)な職場風土や社会の許容度があったら、どんな状況にある人でも働きやすいと思います。

女性が働きやすい環境は、障害がある人も、病気で治療中の人も、不妊治療中の人も、介護中の人も、結婚している人も、未婚の人も、多様な人が働きやすい環境であるはず。

早く、「ワーキングマザー」「キャリア女性」と言わなくて済む社会になりますように。

 

働く女性全員に観てほしい作品です。↓ ↓ ↓

チョ・ナムジュ作 『82年生まれ、キム・ジヨン』

82年生まれ、キム・ジヨン(字幕版)