飛紅真の手紙

フェミニストの精神看護専門看護師ブロガーが、自然、アート、社会問題を綴る。

「沈黙」ではなく「隠ぺい」。35年前の北公次氏の性虐待告発を隠ぺいし続けたジャニーズ事務所とメディア

元フォーリーブス北公次氏による34年前の告発ビデオ映像を観て、現在当事者たちが告発しているジャニー喜多川氏による性虐待問題は、北公次氏の告発内容と全く変らないことに真底驚きました。

北公次氏は16歳から4年半、ジャニー北川氏から毎日性虐待を受け続け、グルーミング(手なづけ)されていたことを告発していました。

「我慢しないといけない雰囲気がつくられちゃって」

「ジャニー氏の言うことを聞かないとデビューできないんだと思っていた」

「実際にデビューさせてやるって聞いていましたから」

『映像版 光GENJIへ』1989年、村西とおる事務所製作

 

告発本の内容を全く取り上げようとしないメディアに対しても糾弾していました。

「正直言ってね、書いてくれるのは何社しかいないよ。新聞は書いてくれんわな。それから女性週刊誌は書いてくれない。TVだって・・・レポーターは何もやってくんない」

『映像版 光GENJIへ』1989年、村西とおる事務所製作

 

ジャニー喜多川氏、メリー氏に対しても強く訴えかけていました。

「ジャニーだけじゃなくて、メリーにも考えてもらいたいことは、20年間まだ同じことを繰り返してるってこと」

「だますのはよくねえっつうんだよ!」

「子どもだけじゃなくて親までもだましてさ。俺の告白がなかったらどうなる?」

「やめろよもう。もう繰り返しはやめろよ!」

『映像版 光GENJIへ』1989年、村西とおる事務所製作

 

ジャニーズ事務所でデビューを目指す若者たちにも警告しています。

「これから新しく生まれる、未来ある若手の若い子がまた同じ目にあって、それも親も知らずに、ジャニーズ事務所だから安全だとか、そういうことは絶対ありませんから!それだけは言っておきます」

『映像版 光GENJIへ』1989年、村西とおる事務所製作

ジャニーズ事務所、TV局、新聞社、一部を除く出版社に徹底的に隠ぺいされ続け、救済されることなく、死の直前にブログに「ジャニーさん メリーさん ありがとうございました 感謝しています」という言葉を残し、63歳で亡くなった北公次氏の無念を思うと、言葉もありません。

 

1.告発本と告発ビデオ出版の経緯

初の実名での告発本がどういった経緯で出版されたかを知りたくてたどり着いたのが、2023年8月出版、本橋信宏著『ジャニーズと僕』。

いまから35年前の1988年、北公次氏に5日間の長時間インタビューを行い、ゴーストライターとなって『光GENGIへ』を書いた著者の作品だけあって、歴史の裏の裏までを知ることができました。重要な証拠資料になるんじゃないかと思うくらい。↓ ↓ ↓

僕とジャニーズ

いまから35年前、告発本出版を提案し後押ししたのが、『全裸監督』のモデルとなったAV監督の村西とおる氏。

村西とおる監督は、監督するAV作品に出演していた女優と田原俊彦氏とのスキャンダルをめぐってジャニーズ事務所と対立していました。

1988年、メリー副社長と白波瀬広報部長が週刊誌へ圧力をかけてスキャンダルをもみ消したことに怒った村西とおる監督は、「ジャニーズマル秘情報探偵局」という専用電話回線を引き、一般人からタレントのスキャンダル情報を募集し週刊誌や夕刊に載せて反撃を企てていました。

一般人から得られた情報の中で、「ジャニー喜多川氏と北公次氏との同棲」という内部情報に注目し、芸能界を引退していた北公次氏を訪ね、本人インタビューに至った、というわけだったのです。

この経緯には驚きの連続でした!!

さすがは村西とおる監督。その反骨精神にも脱帽(というか納得)ですが、

インターネットがない時代であっても、やはり物事の真相に迫る情報とは、「人の声」であり「告発」である、ということ。

一つ一つの小さな声を丁寧に拾い上げ、光を当て、当事者をリスペクトすることがいかに大切か、ということを考えさせられました。

ジャニーズ事務所との利害関係がなかった村西とおる監督だからできた、とも言えますが、全くないかと言えばそうではないはず。メディアにAV作品の宣伝を拒否される可能性があったにもかかわらず、疑惑を追及しようとしたのです。

さらに、告発本『光GENGIへ』は短期間に35万部のベストセラーになり、世の中で「周知の事実」となってもなお、一部週刊誌を除くメディアはどこも取り上げようとはしなかったといいます。

特にTV局は露骨で、北公次氏の名前が出るとピー音を鳴らし放送禁止用語扱いしていたそうです。それに怒った村西とおる監督が翌年、ジャニー喜多川氏の性虐待を告発するビデオ作品『映像版 光GENGIへ』を制作したというから、その執念はすごい。

さらに、北公次氏には覚せい剤使用による逮捕歴があり、告発の信頼性が疑われていたこと、芸能界復帰を目論んだ売名行為だと非難する声もあり、村西とおる監督はこのビデオ作品に元ジャニーズJr.たち7名にも出演依頼し、実名顔出しで証言してもらったのです。

さらに村西とおる監督がすごいところは、何とかジャニー喜多川氏の性虐待を事件化しようと、当時の刑法で傷害罪や強制わいせつ罪で罪に問える「肛門性交」を強要されていた元ジャニーズJr.を探し出し、証言してもらったというところ。

おそらくこうした問題追及や事件化は、本来であればメディアや警察、司法の責任です。しかし、当時の日本社会全体が性暴力を「スキャンダル」程度にしかとらえない風潮にあり、北公次氏の告発は総スカンでした。

「誰もやってくれないなら自分がやるしかない」と考えたのは唯一、北公次氏と村西とおる監督くらいだったのでしょう。

 

2.ジャニーズ事務所の隠ぺい体質

『ジャニーズと僕』で、村西とおる監督本人がジャニーズ事務所の権力構造について証言しています。

メリー副社長と白波瀬広報部長は、田原俊彦氏の女性スキャンダル記事ををもみ消すために、親衛隊を引き連れて直接出版社へ出向き、出版社に虚偽の記事を書かせたのです。

この件を機に、それまではメディアと対等だったジャニーズ事務所は、「何かあればうちのタレントは出さない」とメディアのトップに直接クレームを入れ圧力をかけることで思いのままにコントロールできると学習し、メディアを支配下に置いてきたのです。

 

ジャニーズ事務所とメディアとの利害関係によって、メディア側の言論の自由が奪われ、北公次氏の告発はなきものにされ、結果的に数千人もの性虐待の当事者を生んでしまったのです。

メリー副社長も白波瀬広報部長も、藤島ジュリー景子氏も、ジャニー喜多川氏の性虐待については知っていたと再発防止特別委員会でも報告されています。

藤島ジュリー景子氏は「暴露本も読みましたが」と会見でも述べていましたが、これは未成年への性虐待という重大な人権侵害を承知の上で隠ぺいしたと自ら認めたも同然です。

推定年商1000億円のうち、推定1100万人のファンクラブ会員からの収益は500億円。ジャニーズ経済圏とも言われる巨大な利益を守るために、性虐待を隠ぺいしてきたわけです。

こういった企業の利益至上主義や隠ぺい体質というのは多くの人の人権も命も奪う可能性が大きく、非常に深刻です。

彼ら反面教師によって、あらゆる企業や団体が自浄作用を持つということの重要性を改めて突き付けられているように思います。

声なき声を取り上げ報道するというメディア本来の機能を果たさない国で、人権が守られるのか非常に疑問です。きっと政府との関係も同じなのではないかと思ってしまいます。

一企業との利害関係にほとんどのメディアが縛られ報道の役割を放棄してきたことにこそ、これからメスが入るべきです。

そしてやはり、いまだ幹部は一新されない、社名も変えないジャニーズ事務所。廃業して一から出直したほうがいい。これが私の意見です。

 

3.メディアの正義とは

もしも深刻な問題が起きた時、警察や司法が事件として取り扱ってくれなかったら、国が保障してくれなかったら、社会的制裁を加えられる最後の砦はメディアだと思ってきました。

いじめも、ハラスメントも、虐待も、公害も、汚職も、真っ先にメディアが糾弾し、遅れて警察や司法、最後に国が動くイメージがありました。

しかし、35年前の告発をメディアが徹底的に隠ぺいし続けてきたことを知り、私の中でメディアへの信頼度は確実に下がりました。

各メディアにとっては、少年たちの性虐待の苦しみよりも、ジャニーズ事務所に忖度して視聴率や広告収入を得ることの方がはるかに重要だったと言わざるを得ません。

BBCや国連からメディアの責任が厳しく追及されて以降、ニュースではよくメディア側がこの問題を「沈黙」し続けた、と表現しているのを目にするけれど、それは本当に適切な表現でしょうか?

政府、企業、学校、病院などが起こした事件や事故は「隠ぺい」と大々的に報道するにもかかわらず、自分たちメディアのこととなると、微妙に表現のトーンを下げ、紳士的で柔和に聞こえるようにしているところに、責任逃れともいえる狡猾さを感じるのは私だけでしょうか?

メディアは「沈黙」したんじゃなく意図的に「隠ぺい」したんですよ。

自分たちの責任に真摯に向き合い、ジャーナリストとして言葉をもっと適切に選んで表現してほしい。

今後、メディアは自分たちのこととしてこの問題を隠ぺいし続けてきた構造を徹底的に追及し、幹部の交代などの責任を取るべきでしょう。そして、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、報道ポリシーや報道倫理規定を根本から見直し、報道機関を監視する第三者機関などの機能を強化すべきだと考えます。

報道機関は、医療、教育、司法と同じくらい、専門性を高くもつべき=倫理が問われる職種なのではないでしょうか?だって一人の人生や個人情報を扱うのだから。

日本のジャーナリズム精神はどこ行った?

最後の砦として、諸悪を暴き正義を追及するメディアであってほしい!

 

youtu.be

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こちらのVHS作品は「ナイスですね!村西とおる全裸監督劇場」でもダウンロード作品として有料配信され視聴可能だそうです↓ ↓ ↓

『映像版 光GENJIへ』