飛紅真の手紙

フェミニストの精神看護専門看護師ブロガーが、自然、アート、社会問題を綴る。

ジャニーズ事務所の性虐待問題「再発防止特別チーム」設置に期待する、組織に外部の目が入ることの大切さ。

ジャニーズ事務所が第三者委員会による調査をついに決断したようです。

これについては、大きく評価できると私は考えています。

また、組織が事件や事故など不祥事を起こしたときの第三者委員会による検証というのは、「反省と再発防止」という大きな社会的意義がある活動だと考えています。

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被害者からの勇気ある告発に端を発してファンが立ち上げた「第三者委員会による検討と事務所による謝罪」についての署名活動には、私も参加しました。

ジャニーズ事務所とは関係のない、弁護士、精神科医、臨床心理士の3名で構成される「再発防止特別チーム」による約1時間20分の会見をYouTubeで視聴しました。

記者会見の印象として、リーダーの林弁護士と飛鳥井医師は、質問にも真摯に的確に返答され、とても信頼できる第三者委員会だと感じました。

以下に、記者会見を受けて考えたことについてまとめました。

 

1.被害の全容把握には工夫と配慮が必要

「第三者委員会がどこまで調査するのか」「どこまで明らかにされるか」が、記者たちの一番の関心だったと思います。

今回の第三者委員会では、すべての所属タレント・元タレントにアンケート調査など被害の全数把握などを目的とした「網羅的な調査」については考えていない、としています。

この判断については私も賛成です。性暴力という被害者に「恥」「自責感」が生じやすく、周囲の「偏見」といった「二次被害」が生じやすい特徴からしても、

調査を希望していないタレントや元タレントに一方的に調査することは新たな暴力の行使につながってしまうだろう、と考えるからです。

ただ、第三者委員会が立ち上がったことを被害者が知れば、

「なかったことにしたくない」という思いが掻き立てられ、

「話したい」という被害者はあとからあとから出てくるように思います。

現状ではカウアン岡本さんなどのように「顔と実名を公表しての告発」に留まっていますが、

匿名でプライバシーが配慮されれば「話したい」という被害者はきっと出てくると思うのです。

それは、罪に問えなくても自分が受けた過去の被害を「認めてほしい」気持ちがあるからです。

性暴力被害は、自分で被害について向き合い、他者からもその事実と苦しみを認めてもらうことで回復が進んでいくことが多いからです。

このことからも、被害をできる限り多く事実認定していくためにも、

「任意で被害について話すことを募集する」

というアプローチをできる限り強制力が働かない形で試みてほしいと思います。

インタビュー調査などの質的研究手法などもそうですが、強制力が働かないよう調査することが研究結果の真実性・妥当性の担保には重要なのです。

事実認定までの期間には、できるかぎり「いつでも話したい人を募集する」間口を積極的に開き続けてほしいと思います。

話す上での被害者の心理的負担への配慮については、飛鳥井医師ともう一人の臨床心理の研究者がメンバーにいるということで、安心できるのではないかという印象です。

 

2.組織に「外部の目」が入ることで組織の自浄作用が高まる

第三者委員会は組織と利害関係のない立場であるからこそ、公平・公正に調査ができ、明らかにされた事実も真実性・妥当性が高いものになります。

ジャニーズ事務所が事実を認めていないにしても、再発防止特別チームは「性暴力があったという前提で調査する」と話しているので、

性暴力があった、組織としての問題があったということを社長が明言せずとも、暗に認めているのは明白でしょう。

私は民間の精神科病院で働いていますが、

「人が人を援助する」「人命にかかわる」業界では医療事故やハラスメント、コンプライアンス違反、訴訟、といったリスクと常に隣合わせです。

だからこそ組織の「自浄作用」が不可欠です。

組織が自浄作用を高めるためには、自組織のリスクマネジメント委員会や懲罰委員会、ハラスメント窓口などを整えることはもちろんですが、

自組織だけでは結局は馴れ合い、見逃し合いになってしまい、それらのシステム自体が形骸化し、「名ばかりで機能していない」という状態すらなりかねません。

まさに私の病院では昨日今日と「病院機能評価3erG」という5年ごとの第三者評価を受審中です。

第三者機関である「日本医療機能評価機構」から3名のサーベイヤーが訪問し、

丸2日間にわたり、90項目もの評価の視点で、カルテから書類から面接から現場訪問から何から何までを見て「求めるレベルに達しているかどうか」を審査します。

都道府県や市町村の公的監査でも、ここまで病院を丸ごと評価はしません。

数百万円の受審料が必要ですが「日本医療機能評価機構」はあくまで公益財団法人であり民間企業なので、

中立的な立場で公正に審査しており、お金を積めば「認定病院」の称号を得られるわけではありません。

更新が終われば5年後の更新まで改善活動は続き、前回受審の結果を改善することが必要になるので、常に取り組み続けることになります。

結果的に、病院機能評価を受審し続ければ、「水準以上の質を保つ」ことができるのです。

私の病院内でも「いつ第三者評価をやめるのか?」という議論は毎回起こりますが、医療の質を保ち高めるためには、常に先へ先へと改善を続ける必要があり、やめるという選択肢はないと私は思います。

やめれば、自組織だけで医療の質を保てるのか?我々だけでそれができるか?といわれれば自信はありません。人は低きに流れるのです。

お金を払ってでも大変な準備をしてでも受ける価値が第三者評価にあると思っています。

第三者評価を取り入れよう、続けよう、とする院長や理事長の判断は尊敬に値すると私は思います。

 

「監視する外からの目」がなければ、人も組織も堕落します。

ジャニーズ事務所が設置する「再発防止特別チーム」についても同じで、

今回は一時的な調査チームでありますが、

今後も組織が低きに流れないための「外部の目」を常に入れる必要があります。

それは、影響力の大きな組織の社会的使命だと思います。

特に病院や施設、学校、大学、塾や養成所など、権力をもった大人と権力をもたない者(社会的弱者)がいるような組織においては、

「アドボケイト(権利擁護)」=声を上げることを支える機能が不可欠です。

今回のジャニーズ事務所の性暴力問題では日本の姿勢そのものが問われています。

「再発防止特別チーム」の今後の活動と調査結果、それを受けたジャニーズ事務所の対応に期待しています。

どうか、社会的弱者が絶望することのない社会でありますように…。