20年以上前からジャニー喜多川氏の性暴力については、「週刊文春」の報道や実名での告発本の存在などで、私自身は認識していました。
しかしながら、勇気ある被害者の告発があっても、TVや新聞が全盛期の時代、週刊誌と告発本以外に大きく取り上げられることはなく、「疑惑」の域を超えることができないまま現在に至ります。
加害者であるジャニー喜多川氏だけの問題ではなく、ジャニーズ事務所、報道、周囲の大人たち、報道を知っても声を上げない私たち・・・
社会全体で黙殺してきたともいえます。
誰一人「自分には関係ない」と言い切れません。
だからこそ、今回の勇気ある被害者の告発を、私たち一人ひとりが重大に受け止めるべき時なのだと強く思います。
1.第三者委員会による調査で組織の自浄作用を高める
ジャニーズ事務所は第三者委員会の設置はせず、相談窓口を開設して対応するということですが、
患者への虐待などの不祥事を起こした精神科病院の言い分と全く同じだな、と正直驚いています。
隠ぺい体質の組織は、事件や事故を起こした後に第三者委員会を設置したがらない、ということは通例です。
自組織の落ち度を認めず、本気で再発予防に取り組もうというインセンティブが全く働かないのです。
それは裏を返せば、組織のイメージ低下やバッシング、業績悪化を恐れるといった、自組織の利益、保身しか考えていません。
不祥事を起こした組織では、トップの交代と第三者委員会の調査は必須のはずです。
「新たに生まれ変わります」というクリーンな組織をアピールする方が、
よっぽどイメージ悪化が防げるだけでなく、むしろイメージアップもありえます。
ジャニー喜多川氏亡きいま、事実は明らかにはできないかもしれませんが、
多くの告発があったにもかかわらず、
黙殺してきたジャニーズ事務所の「組織体質」を見直す最後のチャンスだと思います。
一流事務所の社会的責務として、
自組織のこれまでとこれからに真摯に向き合い、
説明してくという使命を果たしてほしいと思います。
多くのジャニーズファンやスターにあこがれる子どもたちのためにも。
さまざまな組織が、「同じような過ちを犯さない」というロールモデルにできるためにも。
2.性虐待が子どもにおよぼす甚大な影響を知ってほしい
特に、子どもに対する性虐待は、深刻なトラウマやDID(解離性同一性障害)につながります。
被害を受けた年齢が低ければ低いほど甚大な影響になります。
レイプは災害よりも、事件に巻き込まれるよりもトラウマを高確率で発症します。
性虐待は自分と他者との「境界線」を学ぶ大切な時期に、
信頼する大人から「境界線が侵害される体験」です。
自分で自分をコントロールできるんだ、というコントロール感も、
他者への信頼感も奪われます。
社会の中で人間として生きていくのに必要な感覚が奪われます。
「子どもだから覚えていないだろう」
「大人になったら忘れるだろう」
はありえません。
「性虐待で脳が委縮する」という研究結果も多数発表されるようになりました。
鑿(大工道具のノミ)のように脳の形を変えてしまう、人間を確実に壊す行為でしかありません。
BBC特集で元ジャニーズJr.の被害者の告白や、カウアン・オカモトさんや橋田康さんの会見など、勇気ある告発もある一方で、
誰にも告白することなく一生抱えて生きていく被害者も数多くいると思うと、
言葉もありません。
性虐待の記憶を無意識的に封印している(表面上は忘れ去ったようにみえる)「解離」という状態を起こして、
生き延びようとしてきた被害者もいると思います。
性虐待はその時点での被害が「終わり」ではなく「始まり」です。
被害の記憶、苦しみ、傷つき、様々な身体不調が続く長期戦なのです。
私はずっと精神科病院で働いていますが、
幼少期からのトラウマを抱え自傷・自殺を繰り返しながら、
何とか生き延びようとしてきや人たちが確かにいます。
一方で、自殺を選ぶ人も数多くいます。
中学生の頃にレイプされ、私の勤務中に自殺した女性もいました。
「大人の性的はけ口」の一言では済まされない、
子どもという大切な財産が壊されるだけでなく、
性虐待の被害者は将来的な自殺リスクも非常に高く、
引きこもりや精神障害などの発症など、さまざまなリスクを抱えます。
長期にわたり黙殺してきたジャニーズ事務所は被害者に対する責任を重大に受け止め、
被害者には謝罪だけでなく、長期間の「ケア」「癒し」を届けてほしいと思います。
子どもへの性虐待は、日本の未来に間違いなく甚大な影響をもたらす自己破壊行為だ、という認識が私たち一人ひとりがもつべきです。
社会全体が、子どもに対する性虐待を許さないというポリシーを持つ、
被害をなかったことにしない、
声なき声をキャッチする、
あるかもしれないと考える、
という視点を持ってほしいです。
3.子どもへの性虐待はあらゆる場で起こりうることを知ってほしい
家庭内、親戚関係、近所、習いごと、少年団、育成会、宗教団体など、
大人と子どもが同じ場にいて、
大人が絶対的権力を有する、
上下関係が強い場では、
どんなところでも性虐待は起こり得ます。
その前提のもとに、
二人きりにしない、防犯カメラを設置する、子どもが相談できる窓口を持つなどの
防止対策が重要です。
また、子どものしぐさがいつもと違う、などおかしな点を見過ごさないこと。
加害者の9割は顔見知り、知らない人は1割に満たないのです。
こうした事実を大人も子どもも知ってほしいです。
また、加害者の傾向や特徴、プロファイルなどはなく、
どんな人も加害者になりうるということは衝撃的な事実です。
母親も、医師も、性暴力被害者に対応するNPOのスタッフですら、です。
安心できない世の中ですが、そのくらいの構えが必要です。
SNSなどが発達するいま、巧妙にグルーミング(手なづける)する大人が、
常に子どものすぐ近くにまで迫ってきています。
「みんなが持っているからウチの子だけ持たせないのはかわいそう」と、
スマホを安易に子どもに渡すのではなく、
SNSの使い方やルールを伝え、性教育を済ませてから渡してほしいです。
SNSを通じた性虐待が、いまこの瞬間にもどれほどの数起きているかと思うと、やりきれません。
4.子どもが性暴力について正しく学ぶ機会をつくる
私は性暴力被害者支援看護職(SANE)プログラムを修了し、
支援や予防啓発、性暴力にかかわる問題を考え続けています。
おそらく自分の記憶をたどってみて、
この世の中「レイプ」という事実がにあると知ったのは、
多感な小学校3~4年の頃、再放送で観た野島伸司脚本のTVドラマ『ひとつ屋根の下』『高校教師』でした。
その時に感じた「恥ずかしいことを強制されることがあるんだという衝撃」「打ちのめされた」感覚はいまでも強烈に脳裏に刻まれています。
親や先生や周囲の大人が、「知らない人について行ってはいけない」としきりに話す本当の意味を、理解したのもこの時からでしょう。
また、親の性行為を偶然目撃したり、親のAVビデオを観てしまったのもこの頃。
当時はコンビニで18禁マンガやレディースコミックスが並び、年齢確認もなく小学校高学年なら買える時代でした。
小学3~4年の頃、「性行為とはどういうものか?」知りたくて、18禁のレディースコミックスを購入したことがありました。
残酷で暴力的な性、快楽目的の性、アブノーマルな性が描写されているため、
自分で購入して読んでおきながらも、非常に強いショックを受けたことを思い出します。
その頃から、友人のお姉ちゃんからマンガを借りたり、少し背伸びしたマンガ(少女フレンドとか高校生向け)を買ったりと、
たくさんの性に関する知識を自分なりに集めて、
「人間にとっての性行為とは何なのか?」
「なぜ性暴力は起きるのか?」
をずっと考え続けてきた気がします。
強烈な性への目覚めが、
安全な性教育ではなく、
現在やっと教育現場で始まった子どもへの性教育ではなく、
TVドラマ(それも小学生が観るべきでない内容)やレディースコミックスだったというのは何とも残念ですが、
こういった強烈な体験や「いやらしいこと」として、
性について学ぶのではなく、
子どもには、
「からだはとても大切なもの」
「からだは自分でコントロールするもの」
「同意のない性行為は許されないこと」
などを、ショックを与えず、正しい知識をゆっくりと学べんでいける性教育を届けたいと考えています。
我が家では、3歳から絵本での性教育をゆっくり始めてきました。
家庭内では性について全く話題にしない、むしろ敬遠するという家庭もまだまだ多い現状です。
子どもたちにはどんなことが性暴力にあたるのかを、幼いうちから正しく知る権利があり、教えるのは親の責任でもあると思います。
性暴力の被害者にも加害者にもならずに、
自分も他者も大切にできる子どもたちを社会全体で育んでいけることを願います。
5.性的同意(性的自己決定)について正しく理解してほしい
性犯罪における刑法改正案が国会で審議は始まりました。私は、NPO法人Springのロビイング(署名活動)にも参加しました。
刑法改正案では、強制性交等罪は「不同意性交等罪」に罪名が変更され、性交同意年齢は13歳から16歳へと引き上げられます。
署名ページはコチラ ↓ ↓ ↓
日本では明治時代から100年以上も刑法は変わらず、性交同意年齢は諸外国と比べてもダントツ低い13歳のままでした。
中学1年生にどれほどの性教育とIT教育が提供されているのでしょうか?学校教育でも家庭内教育でも。
16歳に引き上げられることは大きな前進です。16歳以下に対する不同意の性行為はすべて性犯罪として罰することができるようになります。
「性的同意」とは「Yes Means Yes」=積極的なイエス以外はすべてノー
ということを、大人も子どもも、社会全体が知ってほしいです。
私自身も、性暴力被害者支援看護職(SANE)として、普及活動に少しでも貢献出来たらいいなと思っています。
今回のジャニーズ事務所の性虐待問題を、社会が変わるきっかけになってほしいと思います。
性暴力を自分ごととして考えられる社会になりますように!!!
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