飛紅真の手紙

フェミニストの精神看護専門看護師ブロガーが、自然、アート、社会問題を綴る。

性暴力で苦しむ人を一人でもなくすために大人も子どもも知らなきゃヤバい「性的同意」

学校でも家庭でも教えられてこなかった「性的同意」。ようやく「プライベートゾーン」「プライベートパーツ」という言葉で幼児から教育する時代になってきました。大人のほうこそ学び直す必要がありそうです。

 

1.自分のからだは自分だけのもの~性的自己決定権~

 肩をたたく、握手する、ハイタッチする、頭をなでる、頬に触れる、ハグする

・・・。

誰かの身体に触れるとき、「触ってもいい?」と言葉で相手の気持ちを確認していますか?

反対に、誰かに勝手にからだを触られたとしたらどう感じますか?きっと、嬉しいと感じる人はほとんどいないのではないでしょうか。

なぜかというと、人は誰もが「バウンダリー(境界線)」をもっているからです。「バウンダリー」は人と人との間を区切る見えない線のようなもので、一人ひとり、相手によっても、時間によっても、「これは大丈夫」「これはいやだ」という感覚は変わります。

自分のバウンダリーを侵害されると、不快感や恐怖、相手に対する不信感を感じます。「自分のからだは自分だけのもの」なので、バウンダリーを決めていいのは自分自身だけなのです。

親、友人、恋人、夫婦など親密な間柄であったとしても、勝手にからだを触ってよい権利は誰にもありません。自分のからだをどうするか自分で決める権利のことを「性的自己決定権」といい、誰もが生まれながらにもっている生得権です。

 

2.「性的同意」を知っていますか?

 性行為(性的な欲求によって行うさまざまな行為)は自発的な意思で行なうものです。愛情の有無にかかわらず、恋人同士や夫婦であったとしても、互いの同意が確認できなければそれは「性暴力」です。自分がしたいからといって相手もしたいとは限らず、性行為にいつでも応じることが愛情の深さを示すわけではありません。

 「すべての性行為に対して、互いがその行為を積極的にしたいと望んでいるかを確認すること」を性的同意といいます。

性行為への参加には、互いの「したい」という明確で積極的な意思表示が不可欠です。性的同意を示すためには、性行為の内容や起こりうる結果とリスク(妊娠、性感染症、性暴力など)を十分理解していること、途中で気が変わることも含めて性行為をしない選択肢が尊重されることが前提です。

よって、酒に酔っている人、意識のない人、寝ている人、16歳未満の子どもは同意を示すことができません。また、何も言わないことや無理やり「はい」と言わせることは、真の同意ではありません。

性行為の際は、自分の気持ちを押し付けたり、逆に自分を犠牲にして言いなりになるのではなく、互いが言葉ではっきり気持ちを伝え合い、確かめ合いながら進めることが大切です。


3
.積極的な「イエス」以外はすべて「ノー」

日本では「立場が上の人や年長者の言うことを聞くべき」というパターナリズム(父権主義)や、男性優位の家父長制社会が長く続いてきました。「みんなに合わせるべき」という同調圧力に満ちた社会では、一人ひとりのバウンダリーが違うことは無視され、「同意」をとることになじみがありません。

「いいえ」「いやだ」という習慣が身についていない社会では、「嫌よ嫌よも好きのうち」というレイプ神話に代表されるように、性的同意は軽視され、多くの性暴力を生んできました。

性行為は「イエス ミーンズ イエス」つまり、「したい」「しようよ」という積極的なイエスのみが同意である、それ以外は性暴力である、と考えるのがいまの世界基準です。

性的同意を得ることは、紅茶をすすめることに例えて理解できます。寝ている人や泥酔している人、飲みたくないという人に無理やり紅茶を飲ませたりはしませんよね。性的同意も日常生活における人と人との自然なコミュニケーションのひとつなのです。 

 

4.「性的同意」と刑法改正

 性暴力を受けた当事者の声が国を動かし、2023年7月には大幅な刑法改正が行われ、罪名が「強制性交等罪・強制わいせつ罪」から「不同意性交等罪・不同意わいせつ罪」に変更され、同意の要件も広がりました。

「同意」というキーワードが入ったことで、今後、日本社会は「同意のない性行為はすべて性暴力である」ことが当たり前になる社会へと前進していくでしょう。

また、性行為の同意ができる最低年齢である「性交同意年齢」は、世界でも最も低い13歳から16歳へとようやく引き上げられました。これまで小中学校では性教育がほとんどなされず、妊娠や性感染症、性暴力についての知識がないのに、「13歳なら性的同意ができる」と考える日本の刑法には明らかに無理がありました。

家庭でも学校でも、子どもも大人も、性に関する知識を正しく学び、互いの性的同意を尊重し合える社会であってほしいと願います。 


5.性的同意を子どもに教えるための絵本

我が家で性的同意を教えるために、3歳から繰り返し読み聞かせている絵本を紹介します。

 

『おしえて!くもくん プライベートゾーンってなあに?』小笠原和美監修

性暴力被害者支援看護職(SANE)養成プログラムで、小笠原先生より直接ご講義を聴きました。女性警察署長としても子どもの性暴力撲滅に向けて活動されてきた情熱的な先生です。

おしえて! くもくん プライベートゾーンってなあに?

 

『だいじだいじどーこだ?』遠見才希子作 川原瑞丸絵

性教育活動を熱心にされている産婦人科医による作品です。私は幸いにも、性教育に熱心な産婦人科医の講義を聴く機会に恵まれました。臨床現場で切実な思いを抱えていること、日本の性教育のあり方に疑問をもって自ら動こうとしていることに、希望が見えてきます。

だいじ だいじ どーこだ?

 

『子どもを守る言葉 『同意』って何?YES NOは自分が決める!』レイチェル・ブライアン作

性教育研究者の村瀬幸治先生、ジャーナリストの伊藤詩織さんも本書内で推薦文を書かれています。世界的に有名になった「Tea Consent(紅茶と同意)」の動画を制作したアニメ―ターの作品です。大人でも本当に腹落ちしますし、可愛いイラストにくすっと笑えます。漢字が多いので小学校以上の向けです。

子どもを守る言葉「同意」って何? YES、NOは自分が決める!

「Tea Consent(日本語版)」の動画 ↓ ↓ ↓

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