飛紅真の手紙

フェミニストで精神看護専門看護師ブロガー、自然、アート、社会問題を綴る。

看護職に断捨離できないセルフネグレクト気味な人が多いのはなぜなのか

思えば、私の上司2人は断捨離ができないなぁ(と公言している)とふと思ったのです。直属の上司と毎日二人でランチタイムを過ごしているのですが、昨日の話題は「断捨離」。

 

1.家庭で断捨離ができない上司

上司は「13回忌を過ぎても母親の服が処分できない」と言います。3人きょうだいで子どもの頃からななかなか服を買ってもらえず、洋裁もたしなむ母親に服を手作りしてもらうことが多かったと言います。母親自身も、洋服への憧れが強く自分へのご褒美にブランド服を買い亡くなるまで大切にしていたのだとか。

上司の娘は服を買っては数か月おきにゴミ袋に服をまとめて捨てるらしく、「まだ着られる服を捨てるなんてもったいない」と自ら取り出してリサイクルステーションへ出し直すと言います。

さすがに最近は、「家中にモノが増えてきて困る」「捨てようと思うのに捨てられない」と言い、夫は上司以上にモノを捨てない主義だそう。

 

「ミニマリストにあこがれるけど、基本アタシはケチだから!」と、自分の思考パターンをわかっているけどやや自虐的に開き直っている感じ(笑)。

「捨てるのは罪悪感だけど、もらってくれる人がいれば気持ちが救われる」

「リサイクルショップで数百円になるなら捨てるなんて人としてよくない」

「タンス一杯の母のブランド服は買い取ってもらえると思うから取っておく」

「母のフォーマルスーツは時代を選ばないデザインだし娘二人が着ると思う」

など、断捨離大好きな私からしたらツッコミポイントがいくつもありましたが、話をよく聴くことに努めました。

なぜなら、モノに対する関係性があまりにも異なる二人だから。

 

昨年、上司と二人で学会発表のため2泊3日で出張した時のこと。上司は大きなスーツケース、私はリュックサック1つに貴重品入れの小さなショルダー。駅で待ち合わせた時に「さすがミニマリスト!」と驚かれました。飛行機で荷物を預けたり、出張先でガラガラ引くのが嫌だったので「10gでも重量を減らすぞ」と心血注いだらリュックに収まりました。お土産は最小限にして宅急便で送ったし、両手を空けた状態で身軽に帰ってこられました。

 

実際、私も上司からウチの子どもたちにと、子ども用踏み台、水筒、絵本、弁当箱、エプロンなどなど、お下がりをいただきました。かれこれ10年以上前のモノなので手渡された瞬間「えっ・・・!」と絶句するほど劣化しているものもあり、「申し訳ないな。でもさすがにこれは・・・」と思いつつ家に帰って処分させてもらったことも1度ではありません。

上司にとっては思い出の子供用品で、捨てることが耐えられずずっと取っておいたのです。私から見れば使い古しでも、上司から見れば思い入れのある宝物。もらってくれる人が現れて「いまだ!」と、捨てる罪悪感からも逃れモノが減らせる絶好のタイミングだったのでしょう。

「これは使えません」と正直に言えればよかったのですが、どうしても言えませんでした。それ以降は、「○○あるけど使う?」と聞かれても丁重にお断りするようにしています(汗)。

 

モノとの関係性・向き合い方は、その人の歴史や価値観が反映されるので、たやすく否定できるものではありません。

本人が「何とかしたい」とその気にならない限り、いくら断捨離派の考えを吹聴したところで馬の耳に念仏なのです。「捨てろ」なんて強要した途端に拒絶されるのがオチ。

「捨てたいのに捨てられない」と言うのは、結局のところ、捨てないという行動を自分で選んでいるだけ。捨てない理由探しをして現状維持したいだけ。思考停止していたいだけなのです。

 

上司は自称「ワーカーホリック(仕事中毒)」というくらい残業し、部下たちが「帰らなくて大丈夫ですか?」と心配するほど。職場にいる時間の方が長いので、家の整理整頓にまで手が回らないようす。

バリバリ働く看護職、それも責任感の強い管理職ほど断捨離が苦手な人がいる気がするのです。人生の優先順位のトップが仕事(時間的にも)なので、どうしてもプライベートが二の次になってしまう。自分自身のメンテナンスなんて三の次。

仕事が最優先の上司というのは、ともすると部下にも無意識に仕事を優先することを求めがちになります。管理職ほど、プライベートや自分自身を大切にする姿を部下に見せたほうが、働きやすい職場環境になるはず。

断捨離は自分と向き合い、自分を大切にする作業なので、少しずつ上司と断捨離の素晴らしさを共有できたらいいなぁと思っているところです。

 

 

2.家庭でも職場でも断捨離ができない元上司

前任の役職定年した元上司とも1年半だけ一緒に仕事をしました。今では私も自分の仕事部屋(相談室)が与えられていますが、就職したばかりの当時は、元上司の部屋にデスクを置いて一緒に仕事をしていました。

元上司はまさに「モノを捨てられない」団塊の世代。高度経済成長のただ中を生き、初めて自分たちでモノを好きなだけ所有することができた世代。

 

当時の元上司の部屋は本当に凄かったです(汗)。現在の上司の部屋とは比べ物にならないくらい、モノの巣窟のような状態でした。就職したばかりの私の最初の仕事は「片づけ」だったのです。ゴミ袋に使用期限切れの食品や書類、雑貨など3~5袋は捨てました。

元上司1人なのに20畳ある部屋で、大きな会議用テーブルだけでなく、使用していないデスクやロッカーが何台もあったり、趣味の観葉植物をいくつも置き(それも株分けしてどんどん増やしていました)、動けるスペースが少なかったのを覚えています。書類の入ったロッカーを開けると上から物が落ちてくる始末。

 

元上司はなぜこんなにモノをため込むのだろう?としばらく観察していたところ、わかったことがありました。それは、とにかく世話好き奉仕好きなおもてなしの達人で、やっぱり「自分のことより他人のこと」という人柄だったということ。

スタッフや来客に出すコーヒーやお茶、いろいろなお菓子、職場にもかかわらず食器がたくさんあったのです。

新人だろうが看護師長だろうが院長だろうが、訪れた人には等しくお茶を淹れて労をねぎらう人でした。美味しいお茶と優しい元上司の労いに、みんなついついポロっと本音を漏らすのです。

月に1度、院内のケースワーカー(精神保健福祉士)全員を招き、手作りビーフシチューを鍋ごと持ってきて昼休みにランチ会をするため、鍋を温める電気コンロまでありました(笑)。他職種との交流も大切にしていた人でした。

1人で過ごすには広すぎる部屋に、捨てるよりも入ってくるモノ(書類、医療品など)の方がはるかに多い。中規模病院にはクラーク(医療秘書)などはいないので、整理整頓や事務作業も全部一人でやらなくてはいけない。明らかに仕事量はキャパオーバーです。

元上司は人を大切にするあまり、自分自身をメンテナンスすることが間に合わなかったのだとも思いました。もちろんご自宅はこれ以上だと言っていました(汗)。

 

しかし私も、そんな世話好きな元上司のお人柄に惹かれて、お誘いをいただいた現在の職場に就職する決意をしたのです。そして私はいまでも私のもとに相談にやってきたスタッフには必ずお茶を淹れておもてなしすることにしています。

 

3.看護職は断捨離が苦手?

看護職は、労働時間がとても長く、とことん他者に献身する職業なので、どうしても仕事に時間もエネルギーも吸い取られた結果、自分自身のことが二の次になる、プライベートが疎かになるような気がします。

それが行き過ぎると、「セルフネグレクト」(自分で自分を放置する)状態に気づかないうちに陥ってしまいます。その影響は家族問題を生んだり、自分自身の心身の健康に及ぶことすらあるのです。

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特に看護管理者は、看護職という、離職がやたら多く、メンタルヘルス不調を抱えやすいスタッフを育成する立場にあり、ストレス過多なのです。そしてワーカーホリック。

そのストレスを仕事に向けたり、モノのため込みに向けたり、浪費に向けたり、子どもや孫に向けたり・・・向け方は人それぞれ。

上手く自分自身をいたわり、大切にすることで、モノとの関係性だけでなく、時間との関係性、人との関係性もよくなるはずだ、と私は考えるのです。

 

私自身も人のことは言えず、つい忙しく余裕がなくなると「捨てる」「しまう」という判断が億劫になって先延ばしにし、書類が積み重なっていきます。一番苦手なのが書類の断捨離ですね。書類が捨てられず溜まっていくのが私のストレスのサインと自覚しています。

自分自身と向き合うのは簡単ではありませんが、時々は自分自身の状態、発するサインに耳を傾け、メンテナンスが必要。人は走り続けることなどできません。

自分が癒され満たされていなければ、他者をケアすることなどできない、というのが私の看護師としてのポリシーです。

看護職にこそ断捨離イズムが不可欠なのです。

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