ボディ・ホラーって知ってますか?簡単に言えば、寄生虫や病気、突然変異、異形の出産など、人体が変容していく不安や恐怖を描いたホラーのサブジャンル(細分化された分野)で、70~80年代に盛んに製作されたそうです。
幼少期がホラー映画全盛期で、子どもながらに「エイリアン」「ザ・フライ」など人体変容ものを観てきて、最近やっと自分がどのサブジャンルが好きなのかがわかりました。それがボディー・ホラー!!
調べて分かったことですが、ホラー映画のサブジャンルは16種類はくだらない!(分け方にもよるけど)ということでホラーひとつとっても奥が深い。
1.ホラー映画のサブジャンルまとめ
➊ゾンビ
➋スラッシャー
➌悪魔
➍殺人生物
➎吸血鬼
➏心霊
➐地獄の家
➑モンスター(クリーチャー)
➒ボディー・ホラー
➓魔女
⓫子ども
⓬伝染病
⓭超能力
⓮終末ホラー
⓯祝日ホラー
⓰マッドサイエンティスト
参考:『ヒストリー・オブ・ホラー2』(2020)
2.なぜボディー・ホラーが好きなのか
ホラー映画なら何でも好きなわけでは全然なくて、サイコホラーは好きだけどちょっと物足りない。スラッシャーホラー(殺人鬼・血しぶきは嫌だ!)は陰鬱な気分になるし、オカルト(心霊)ホラーだとリアリティに欠ける。
その点、ボディー・ホラーは、生身の「身体」というめちゃくちゃリアルなものが変化していく根源的な恐怖と、「人間の哀れさや、もろさ」をまざまざと見せつけてくる。そこが好きなのです。
おそらく、私が身体医学と精神医学の両面を学んで実際に臨床現場に立っているところも、大いに影響しています。ストレスやトラウマなど「精神」が「身体」にいかに影響を与えるのかも近くで見てきました。
ボディー・ホラーは、医学や科学技術、自然環境は、人体をどこまで操れるのか・・・みたいな、生命倫理に直結するテーマを含んでいるので、考えても考えても答えが出ないところが好き。SFホラーとかなり近いジャンル(重なっている)であることは確かです。
3.ボディー・ホラーのジャンルを確立したデヴィッド・クローネンバーグ監督
ボディー・ホラーに行き着いたきっかけが、デイヴィッド・クローネンバーグ監督の作品でした。
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ストーリー
そう遠くない未来、人工的な環境に適応するよう進化し続けた人類は、生物学的構 造の変容を遂げ、痛みの感覚も消えた“加速進化症候群”のパフォーマンス・アーティストのソールが、体内に生み出す新たな臓器に、パートナーのカプリースがタトゥーを施し摘出するショーは、チケットが完売するほど人気を呼んでいた。しかし政府は、人類の誤った進化と暴走を監視するため“臓器登録所”を設立。特にソールには強い関心を持っていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる―
なぜ人間の身体に新たな臓器が生み出されるようになったのか。なぜ近未来の人間は痛みを感じなくなってしまったのか。進化と言えるのか、退化と言えるのか。プラスチックと人間との関係を人体変容を通して強烈に描く映画っていままで無いよな~。ホラー映画なのに(←失礼)
鋭い社会批判が背景にあるところ、そして全編に渡ってアートな世界でもあったことで、「何この監督!?めっちゃすごい!!!」と大注目になってしまったのです。
特に彼が70~80年代に製作した映画は、人間の心身のもろさに対する不安を映し出し、鋭い社会批判が含まれています。必ずと言っていいほど、医学や科学技術による副作用というか、罰が当たるのです。
「私は映画で身体を重視する。身体とは何で、何をして、何ができるのかが映画の中心になりがちだ。人の身体はある程度まで怪物なんだ(1981年インタビュー映像) 『ヒストリー・オブ・ホラー2』(2020)
ボディー・ホラーという新たなジャンルを確立したのがクローネンバーグ監督。彼の作品で最も有名なのが『ザ・フライ』。改めて観てみたらめちゃくちゃすごい映画でした。
ただただ、ぐちゃぐちゃドロドロなゲテモノ映画ではなく、科学技術や名誉欲に対する社会批判や、人間の尊厳とは何かという問いがしっかりコンセプトにあるところが、他のホラー映画と一線を画しているように思います。伝えたいことがちゃんと伝わる映画って、ホラー映画にもあるんだな、というのが大きな発見でした。
4.クローネンバーグ監督作品に耽溺する
いま、クローネンバーグ監督のボディー・ホラー映画作品をいろいろと観ています。これはブログに書きたい!という作品もあるので、今後、私の目線から紹介していきます。
自分の覚書として、雑誌スクリーンのクローネンバーグ監督の記事を集めた復刻号も買ってしまいました(笑)。深い考察とか批評が書かれているわけではなく、単に映画紹介なので、物足りなさもあるけれどそこが逆にフラットな感覚で読めるのでよいです。